過当競争に巻き込まれた末、覚悟を決めて大胆な変化を遂げたお話。

むかしむかし、二十年ほどむかし。

堂本食品の開発者・猿吉は栗ごはんの開発に勤しんでいた。

ひとつひとつ手作業で栗をむいていたときのこと。
「皮をむいた栗が売ってあればいいのになぁ」

そのとき、猿吉はひらめいた。

「皮をむいた甘栗を売れば、大ヒットするんじゃないか!」

“おもしろく”を理念に掲げる堂本食品。

猿吉の発想を拾い上げ、すぐに皮をむいた栗の開発に着手した。

その名も「ぱっくりりん」

満を持してスーパーの棚に並んだ「ぱっくりりん」は、日本中で売れに売れた。

すると堂本食品はお金をつぎ込み、次々とあたらしい設備を導入し、夜おそくまで工場を動かし、人手もふやした。

栗栗合戦のイラスト

それから間もない半年後。

一社、また一社と皮むき甘栗をつくる会社が出てくるではありませんか。

さぁ市場を奪い合う「栗栗合戦」のはじまりです。

気がつけば、類似商品があちこちに出まわり、「ぱっくりりん」の売上は落ちる一方。

過剰な設備投資や人手の増加もあり、堂本食品は一気に経営難におちいった。

一般消費者を相手にする「市販品」は、ひとたびヒットすれば爆発的な売上につながる一方で、市場の変化に翻弄されやすい。

その怖さを知った堂本食品は、栄養士や調理師といったプロを相手に本物の技術力や開発力で勝負できる「業務用商品」に土俵を変えることで、コツコツと業績を回復していった。

「栗栗合戦」では痛い目にあったが、そのおかげで大胆な変化を遂げ、一皮むけちゃいましたとさ。

めでたし、めでたし。