世の中のニーズを拾い集め、そこから時代の先を読み、変化にそなえるお話。

むかしむかし、堂本食品とキリギリス食品という会社があった。

堂本食品は、高齢者向けの食品がヒットして業績は好調だったが、営業マンたちは現状に甘んじず、来る日も来る日も足繁く、お客様のもとをたずねていた。

一方、「スーパーツクダニ」という大ヒット商品を発売したキリギリス食品は、「これでオリンピックまで食っていけるな」と毎日、飲めや食えやと宴をくりかえした。

営業マンのイラスト

そのあいだ堂本食品は、営業マンが拾い集めた世の中の「ニーズの種」を社内に持ち寄り、「部会」と呼ばれる会議を重ねていた。

外食産業の未来に向けて準備する「外食部会」では、「焼肉屋さんは肉に合うサイドメニューを探しているらしい」という情報をもとに新たなナムルを開発した。

「惣菜パンブームが到来する」と予測して立ち上がった「パン部会」では、堂本食品の技術を活かし、三年後に売れるパン向けの惣菜を考えた。

キリギリス食品は、市場の変化についていけず、「スーパーツクダニⅡ」を苦しまぎれに発売したものの、閑古鳥が鳴く始末。

堂本食品は、コツコツと慢心せず「ニーズの種」を拾い続け、みんなで育てることで、このさき二〇〇年たっても、三〇〇年たっても、花を咲かせ続けることでしょう。

めでたし、めでたし。